首都圏新都市鉄道では2009年11月20日、守谷総合基地内において異常時総合訓練を実施した。これは重大事故発生時における連絡体制や救護、誘導、復旧の要領の確認と習熟を目的としている。昨年に続き実施された今回は一般見学者を募って行われた。
本年は「4035列車(秋葉原12:45発
区間快速つくば行)が守谷~みらい平間自動運転(ATO)走行中に障害物を視認、直ちに手動にて非常制動を掛けたが間に合わず脱線、線路および電車線を損傷」という想定にて訓練が行われた。訓練自体は想定の4035列車守谷出発時刻の13:20より開始、約2時間かけて運転再開までの手順を行った。なお線路復旧・架線復旧・車両復旧は本来この順番で行われるが、訓練では時間の都合上同時進行にて実施された。
左から車両復旧に使用された70F、障害物撤去訓練に使用されたモーターカー、避難誘導訓練に使用された69F。(訓練終了後に撮影)
想定では一本の列車が事故発生となっているが都合上2編成を使用し、70Fが当該列車つくば方相当、69Fが秋葉原方相当として進行した。
車両復旧に使用された70F2170号車(1号車)のつくば方台車。既に手前側に脱線させ木台の上へ静置されていた。
70F2270号車(2号車)のつくば方台車にはジャッキが取り付けられていたが車両復旧訓練前に取り外されていた。
4035列車担当乗務員は前述の想定の下、列車を緊急停車させ(気笛吹鳴で代用)防護無線を発報する(総合指令が付近の列車全てが停車したのを確認し防護無線を解除)。担当乗務員は緊急停止した旨を車内アナウンス、軌道上に降車し事故現場を確認する。TXでは全ての列車でワンマン運転を行っており、乗務員不在時の車内アナウンスは総合指令所が遠隔で行う。
担当乗務員は現場状況を総合指令指示により駆けつけたみらい平駅員へ報告。(右側の蛍光帯たすき掛けしているのが担当乗務員)
担当乗務員は駅員と共に6号車非常扉の階段を組み立て、負傷していない乗客は乗り合わせたTX社員に先導され最寄のみらい平駅へ徒歩で避難。
救急隊が到着し、脱線していない2号車より重傷者、中傷者の搬出を行う。今回の訓練は沿線の常総広域消防本部、つくば市消防本部、取手協同病院DMAT、取手医師会病院DMAT、取手警察署、常総警察署も参加して行われた。
ちなみにDMATとは、災害派遣医療チーム(Disaster
Medical Asistance Team)のこと。鉄道事故などの災害時に迅速に駆けつけ、救急医療の専門的な指導を受けた医療チームである。
見学者テントの後ろにはモニターが設置されていた。これは本番では対策本部に設置され、離れた場所からのモニタリングや現場への指示に用いられる。画面横の黒い箱からNTTDoCoMoのFOMA回線を介し通信する。現場側の設備としては小型カメラ(後出)と小型通信機のみで機動性が高いとのこと。
施設・電気・車両の各復旧班が現場に到着、現場の被害状況を確認。
守谷よりモーターカーを手配しクレーンにて支障物(今回はH鋼2本)の撤去作業を行った。
支障物を荷台に固定し搬出。
スカートとつくば方台車の間では板を渡しジャッキ用レールの設置準備、車内では台車固定の準備中。
台車の固定(右)は終え、車体を上昇させるためのジャッキ設置中。
4つのレバーによりジャッキを操る。右に伸びているホースがそれぞれのジャッキと繋がっている。
ジャッキの準備が整い待機中。
車輪が線路を跨げる高さまで上昇させた。(右端のカメラが先述のモニターへ転送されていた。)
鉛直方向へ上昇後は水平方向を調整する。
一度の調整で車輪は無事本来のレール上へ復旧。
車両脱線復旧訓練の横(1番線)では電車線断線復旧訓練が同時進行で行われた。なお今回は車庫線で行っている関係上、実際に断線させるわけにはいかず模擬断線の状態(一番手前の架線から垂れている線がそれ)で行われた。
復旧作業が完了し総合指令へ報告・送電再開要請を行う。慎重な点検の後、担当乗務員は復旧班より報告を受け事故車の回送に向け車両点検を行い、みらい平まで最徐行で運転を再開(気笛吹鳴で代用)。
守谷総合基地への直通列車は8871列車14F、守谷12:40発~総合基地12:48着。
守谷駅へのお帰り列車は8874列車14F、総合基地15:49発~守谷15:57着。